服薬指導をもっと効果的・効率的に実践したい薬剤師に薦める「5領域」というテクニック

5領域 服薬指導
くすりマン
5領域ってご存知ですか?

僕は新人時代に、とある在宅系の書籍を読んでいたときにこの言葉が登場してきて目からウロコだったのを今でも覚えています。
今も毎日めちゃくちゃ活用しているテクニックの1つです。

薬局の患者さんって、慢性疾患の方が多いじゃないですか。
新規薬や臨時薬が出る人が多いかというと、全体的にみたらDo処方の人の方が多い。
もちろん診療科によっても違いはありますが、印象としては同じではないでしょうか。

そうなってくると、服薬指導がマンネリ化しやすいんです。
しかし、その一方で併用している薬の種類は多く、全てにいろんな確認をしていくのは至難の技です。

薬局での服薬指導ってそんなには時間をかけることもできないので、短い時間でも効果的に、そして効率的にヒアリングしたいというのが薬剤師の本音だと思います。

今回紹介する5領域を活用すればポイントを押さえて体調チェックや副作用チェックが簡単に実践できるようになるので、ぜひとも知っていただければと思います。

モノからヒトへ

change
患者のための薬局ビジョンでは、薬剤師の仕事がこれまでの「対物業務」から「対人業務」へとシフトさせていくべきと示されています。

ここでいう対人業務とは、かかりつけ薬剤師健康サポート機能といったことが主旨になってきますが、要は、「調剤ばかりではなく、ちゃんと人をみて地域医療を推進していきましょうね」というのが本質だと思います。

さて、ここで重要なのは「人をみる」ということになりますが、この考え方がそもそも難しいですよね。

何をみればいいのでしょうか?

人をみることは生活をみること

みる
地域医療の中における「人をみる」とはスバリ生活をみるということだと言えます。

病院というのは、あくまで治療の場所です。早く病気を治して、元の生活、人生に戻るというのが目標です。
ところが、地域というのは患者さんにとって生活の場です。

慢性的な疾患を抱えながらもうまく病気と寄り添いながら生活し、人生を過ごしていく場所です。
なので、薬局薬剤師の仕事というのは、患者さんの生活・人生に寄り添うことが求められているのです。

「生活」を分解してみよう

生活
じゃあ、生活って何なのでしょうか。
みなさんは、どう思い浮かべられますか?

朝起きて、トイレに行き、食事をし、仕事に行ったり子育てをしたりし、家事をし、風呂に入り、寝る。

くすりマン
これが生活ですよね。

この繰り返しの中に、様々なイベントが含まれて来て、それが人生となっていくのだと思っています。

当たり前のことを言うんじゃないよと思われた方もいらっしゃると思いますが、この当たり前が実に大切なんです。

この当たり前を分解すると、5領域と呼ばれている5つの要素に分解できます

  1. 食事
  2. 排泄
  3. 睡眠
  4. 運動
  5. 認知

この5領域を意識することで、薬がもたらす結果が生活機能にどのように結びついているかを紐解いていけるようになります。

くすりマン
5領域には次のような特徴があるんです。

  • 生きている限り必ずあるものであり、身近な事象で質問しやすい
  • その答えからは様々な状態像(副作用、疾患、合併症、効能効果、そして介護問題)が浮かび上がってくる
  • 薬剤と生活機能や QOL の関係を考えるにあたり、この5領域が入り口となる

そしてこれをさらに3+2に分解し、生活維持の基本の3要素としての「食事・排泄・睡眠」と生活行動に必要な「運動・認知」に分けると、考えやすいと思います。

食事・排泄・睡眠

この3つは、どれか1つでも上手くいっていなければ生活の質いわゆるQOLが極端に悪くなってしまいます。

食事が食べられなかったり、お腹が痛くて何度もトイレにいったり、夜中に何度も目が覚めてしまう。

こんな状態いかがでしょうか。自分自身がこの状態になっていることを想像すると、しんどいなと誰しもが思えることだと思います。

逆に言えば、この3つが上手くいっていれば、生活のごくベーシックな部分ですがとりあえずは問題がないんです。

くすりマン
食事OK、トイレOK、睡眠OKであれば、それなりに過ごせているという解釈ですね。

運動・認知

運動と認知は、行動や生活機能を成立させるために重要になってきます。

例えば、正常に歩行ができて買い物にいけるとか、食べたいものを正しく調理できるとかですね。
薬剤師にとっても大切な「薬を飲み忘れない」というのは代表的な認知の部分です。

くすりマン
つまり、運動と認知は生活活動を実行するために必須の能力であるといえますね。

ここまでを総じて言えば、5領域に何か1つでも問題があれば生活に何かしらの支障が出ている可能性が高くなります
何も問題がなければ、ざっくり言えば概ね良好なのです。

5領域は副作用チェックにとても有用

副作用
まず、薬を軸に副作用のチェックをする場合を考えてみたいと思います。

Rp1  ロキソニン錠60mg  3錠(1回1錠) 分3 毎食後  14日分
Rp2  ベシケアOD錠5mg  1錠(1回1錠) 分1 朝食後  14日分

  • ロキソニンがでている患者さんに胃の痛みがないか確認する。
  • ベシケアがでている患者さんに口の乾きを確認する。

よく出くわす処方ですが、これは薬の副作用に対する症状を聞き取って行くやり方です。
いわば、1つ1つ薬の副作用と症状を狙い打ちで確認していく方法です。

くすりマン
対して、5領域を使えば次のような感じです。
  • 「ご飯の方は問題なく食べれていますか?」と質問する。

この問いの先には、ご飯は食べられるけどムカムカしている時があるとか、唾液がでにくくてボソボソした食感があるなどの答えを予測しています。

くすりマン
似ているようで違いますよね。

あえて言うなれば、5領域を活用する場合には、ロキソニンやベシケアの副作用を狙っていなくてもいいわけです。

生活が薬によって影響を受けているかどうかを確認すると同時に、副作用の有無もチェックできてしまうのです。

つまり5領域の便利なところは、消化器系の症状を出しやすい薬が仮に6種類出ている場合であっても、「食事どうですか?」で副作用がチェックできちゃうという点です。

では、5領域を使う際のチェックポイントとアセスメントの仕方について簡単に説明いたします。

食事のチェックポイント

高齢者_食事
  1. 味覚
  2. 食欲

これらをチェックして、何かおかしいところがあれば、次のようなことを疑っていきます。

  • 口の渇き
  • 嚥下機能
  • 胃のむかつき・痛み
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 膨満感
  • 便秘
  • 下痢
  • 認知機能低下

これらが疾患によるものかもしれませんし、薬の副作用かもしれません。
薬剤師はその可能性についてアセスメントし、必要に応じて医師へのフィードバックを行います。

また、食事環境(孤食など)も影響することもありますし、その場合は家族や介護職に相談が必要です

排泄のチェックポイント

高齢者_排泄
  1. 尿の回数
  2. 尿の出しやすさ
  3. 尿の色・臭い
  4. 便の回数
  5. 便の硬さ
  6. 発汗量
  7. むくみ

多尿や頻尿、また排尿障害などを確認していきます。
尿の着色や臭いについては、感染症の可能性を検討します。

便については、水分摂取量の観点が重要ですし、排便の頻度の聞き取りが必要ですね。

発汗とむくみでは、脱水や低血糖などの関連性がありますが、汗やむくみについては以外に見逃しいやすいので意識したいところです。

睡眠のチェックポイント

高齢者_睡眠
  1. 不眠の有無(入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害)
  2. 日中の眠気
  3. 昼夜逆転

睡眠で悩まれている方は非常に多いです。
まずは、どういった悩みに該当しているのかを丁寧に聞き取ってあげる必要があります。

薬剤による催眠作用の持ち越しが原因で日中のだるさや眠気が出ている場合に昼寝をしてしまい、それが原因で夜間の不眠になることも結構目にします。

疾患としての不眠なのか、薬の副作用が悪さをしているの見極められるとよいと思います。

運動のチェックポイント

高齢者_運動
  1. 視力
  2. めまい・ふらつき
  3. 転倒
  4. 手足のふるえ

これらをチェックして、何かおかしいところがあれば、次のようなことを疑っていきます。

  • 視力低下
  • 緑内障
  • 白内障
  • 横紋筋融解症
  • ミオパシー
  • 筋力低下
  • 低カリウム血症
  • パーキンソン症状
  • 振戦

運動能力の低下は、生活機能を著しく低下させてしまいます。

単純に歩行能力が低下する場合では、外出のみならず家の中のトイレやお風呂などに支障がでます。
そのような場合は、転倒による骨折を防ぐためにも、適切な住環境への改修リハビリも検討が必要ですし、医師やケアマネジャーなどに連携します。

認知のチェックポイント

高齢者_認知
  1. 数分前のことを忘れる
  2. 道に迷う
  3. 同じことを何度もいう
  4. 薬をよく飲み忘れる
  5. 物の使い方がわからない
  6. 日付がわからない
  7. 実際には起きていないことを話す

薬剤師としては、認知機能障害の報告がある薬剤についてアンテナを張っておきたいですよね

服用したから必ず起こるわけではありませんので、その辺りは医師との連携が必須です。

認知機能障害の報告がある薬剤

  • ベンゾジアゼピン(BZ)系:一過性健忘、急性せん妄、長期服用による認知機能障害
  • 抗コリン薬・抗コリン作用のある薬剤:記憶力、記銘力低下、せん妄出現
  • 抗うつ薬:三環系抗うつ薬(TCA):抗コリン作用による認知機能障害
  • SSRIおよびSNRI:焦燥、興奮
  • 抗精神病薬:過鎮静、抗コリン作用による認知機能低下
  • 抗パーキンソン病薬(アマンタジンなど):幻覚・幻視、被害妄想、認知機能低下

まとめ

いかがでしたでしょうか?
僕自身は、在宅の現場に入って実際に生活と薬のアセスメントを学ぶ中で5領域に触れてきました。

しかし、5領域は在宅のみならず外来においても本当に役に立ちます。
薬剤師は薬の適正使用を守らないといけませんが、「薬が何か悪さをしていないか?」を見抜くために、ぜひとも活用していただきたいと思います。

くすりマン
ちなみに、僕は川添哲嗣先生の本を読んで勉強しました。
すごくわかりやすくて、みなさんにオススメできる1冊です。

川添式 熱血患者指導術「DO処方、特変ナシ」から脱却せよ! | 著者:川添 哲嗣
Do処方 特変なし

なお、5領域を活用するためのフローチャート(日本薬剤師会 職能対策委員会 高齢者・介護保険等検討会)も作成されています。
こちらを参考にして、ぜひお役立てください。

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